会社勤めをしていた頃は、毎朝のようにネクタイを締めて出かけていた。
鏡の前で結ぶその動作は、まるで“戦闘服”を着るようなものだったと思います。
けれど今、定年を迎えたり、少し肩の力を抜ける立場になったりすると――
ふとした休日に、首元が軽いことに気付くんです。
「今日は、ネクタイを締めなくていい」
たったそれだけのことなのに、なんだか自由になった気がする。
私自身は女性ですが、父や周りの男性たちを見ていて思うのは、ネクタイには「社会の顔」がよく表れているということ。
外向きの自分、頑張る自分、強くあろうとする自分。
でも、ネクタイを外したときこそ、その人らしさが滲み出る。
ちょっとだらしなくてもいい、少し抜けててもいい。
“役割”を下ろして向き合う時間にこそ、本当の自分が見えてくるように思います。
休日の服装には、人生の余白がある。
それをゆっくり味わうことも、大人の特権かもしれません。